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大阪の狭小住宅】狭い家ほど「廊下」が命になる理由|間取りで後悔しないための設計者の視点

「廊下って、正直ムダじゃないですか?」

家づくりの打ち合わせで、よく出てくる言葉です。
特に大阪の狭小住宅。敷地20坪台、3階建て、周囲は住宅に囲まれている。

そんな条件の中で「1cmでも部屋を広くしたい」というお気持ちは、とても自然です。

でも私は、少し笑いながらこうお伝えします。

「実は、廊下を減らしすぎると、家が狭く感じることもあります。」

面積を削っているのに、なぜ狭く感じるのか。
今日は、狭小住宅の間取りを考えるうえで見落とされがちな「廊下」というテーマを、設計士の視点で整理していきますね。


大阪市内や八尾・東大阪エリアでは、20〜25坪前後の敷地に3階建てを計画するケースが多くあります。
国土交通省の住宅土地統計調査によれば、大阪府の持ち家住宅の平均延べ床面積は全国平均よりも小さい傾向があります。都市部では特にその傾向が顕著です。

敷地が限られると、どうしてもこう考えます。

・廊下は最小限に
・LDKを通って各部屋へ
・通路より居室を優先

理屈としては合理的です。
しかし、ここで一度、日常のシーンを思い浮かべてください。

朝の通勤ラッシュ。
同じ人数が乗っている電車でも、

・通路が詰まっている車両
・通路が整理されている車両

体感はまったく違いますよね。

家も同じです。
面積の大小よりも、「動線が整理されているかどうか」が体感の広さを左右します。

狭小住宅の間取り検討でよく出てくるのが廊下幅の話です。

部屋を広くしたいと例えば廊下幅の設定を75cmにしたいとかなえたとしましょう。
もう一つは標準的な廊下幅の場合が85cm。

差は10cm。
ですが体感はそれ以上にかなり変わります。

75cmの場合
・人がすれ違いにくい
・壁が近く感じる
・無意識に肩がすぼまる

85cmになると
・立ち止まれる
・視線が流れる
・圧迫感が軽減する

ここで大事なのは、「通れるかどうか」ではなく「立ち止まれるかどうか」です。

人は立ち止まれる空間を“余白”と感じます。
建築環境心理学の研究でも、通路幅と圧迫感の相関は報告されています(日本建築学会環境系論文集)。

狭小住宅では、数値基準を満たすことよりも、体感設計の視点が重要になります。


一般的な天井高は240㎝。
しかし狭小住宅の廊下では、あえて一部220㎝センチや、一部を260㎝にしたり、

低くしたり、吹き抜けと重ねたりすることがあります。

なぜか。

人は縦方向に余白があると、横方向も広く感じる傾向があります。
視覚心理の研究でも、空間の高さと広さの認知には相関があるとされています。

つまり、面積は増えていないのに、広く感じる。

これは“錯覚”ではなく、“空間認知の特性”を利用した設計です。

大阪の狭小住宅では、面積を増やすことは難しい。
だからこそ、高さと視線の設計が効いてきます。


「白は広く見える」というのはよく言われます。
ですが、廊下を壁も天井も真っ白にすると、逆に境界が強調され、箱感が強く出ることがあります。

おすすめは、

・壁は少しトーンを落とす
・天井は壁よりわずかに明るくする

境界が溶けると、奥行きが生まれます。

狭小住宅の間取りでは、色の選び方一つで体感が変わります。
しかし、この話は間取り図では分かりません。
だからこそ、打ち合わせ初期では見落とされやすいのです。


廊下に天井中央のダウンライト1灯。
よく見かけます。

ですが廊下は、部屋のように“照らす場所”ではありません。
“導く場所”です。

・足元の間接照明
・壁をなでるライン照明
・ニッチを照らすスポット

光が奥へ流れると、距離が伸びて感じられます。

これは「視線誘導」という考え方です。
人は視線が止まると空間を短く感じ、視線が流れると広く感じます。

狭小住宅では、光が設計の一部になります。


廊下収納は便利です。
ですが量を増やすことが正解とは限りません。

奥行き60cmの収納を並べれば、心理的圧迫感が強くなります。

重要なのは、

・奥行き30cm前後の壁厚収納
・使う頻度を限定する
・戻しやすい位置にする

収納は「量」ではなく「設計」です。

狭小住宅では収納を増やすほど動線が詰まり、結果的に家が窮屈になることがあります。
ここは後悔が起きやすいポイントです。


廊下は必ず触れる場所です。

・壁
・床
・手すり

ここが冷たく硬い素材だと、無意識に早足になります。
通りたくない空間になります。

逆に、少し柔らかさのある素材を選ぶと、安心感が生まれます。

間取りだけでなく、素材選びも体感設計の一部です。


大阪市 住吉区
共働きご夫婦
敷地23坪

LDKは決して大きくありません。
ですが廊下を

・幅85cm
・天井一部高め
・間接照明
・壁厚収納+ニッチ

と設計しました。

完成見学でよく言われるのは、

「思ったより広いですね。」

延べ床面積は変わっていません。
ですが体感は変わります。

これが、数字に振り回されない間取りの考え方です。


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このキーワードで検索される方の多くは、「どう広くするか」を探して相談にこられます。

ですが設計の視点では、

・幅
・高さ
・色
・照明
・素材
・収納
・視線

これらをどう整えるかが重要です。

廊下は削る場所だときまっているわけではありません。
この家に必要なのか、必要でないのか、設計力が最も出る場所です。

もし今、「狭いから仕方ない」と思っているなら、
一度、間取りの見方を変えてみてください。

広さは、足し算だけで決まるわけではありません。
整理の仕方で変わることもあります。

焦らず、ひとつずつ判断材料を整理していきましょう。
そのプロセスこそが、住んでからの満足度につながります。


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安本昌巨 ブログ用プロフィール

株式会社シーキューブ代表取締役。二級建築士。
住宅業界歴28年以上。

大手ハウスメーカーの下請け工事店として現場経験を積み、新築・リノベーション・不動産まで幅広く携わり、これまで累計700棟以上のご家族様の住まいづくりに関わってきました。

大阪を中心に、狭小地や都市部住宅など条件の難しい住まいにも数多く向き合う中、
「どんな家を建てるか以上に、誰に相談するかが、暮らしの満足度を左右する」
ということを実感しています。

著書『家づくり 絆づくり 幸せづくり』(刊・エルハウス)では、住まいを通じた家族の関係性について発信。
また、79.2MHz FMやお『OH家エーあなたのおうちの相談室』では、メインコメンテーターとして、専門的な住宅の話をできるだけ分かりやすく伝えることを大切にしています。

小学生のころまで、冬になると一度外へ出なければ入れなかった祖父の家の寒いお風呂。
そして大学生のとき、神戸で阪神・淡路大震災を経験し、被災した友人たちの家を何軒も見て回ったこと。

これらの体験から、
「家は性能以上に、日常と命を守る場所だ」
と確信するようになりました。

家を単なる「性能商品」としてではなく、
「住み心地そのものを性能として考える」
そんな住まいの相談相手として、気軽に声をかけていただけたら嬉しいです

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