狭小住宅で間取りを考えるとき~大阪都市部で家を建てる設計士からの目線~
狭小住宅の間取り設計 大阪で25坪5LDKを考える前に整理したいこと

住宅相談で本当によくあるやりとりです。
「先生、25坪で5LDKってできますか?」
「できますよ」
「じゃあそれでお願いします」
ここで話が終わると、あとで少しだけ苦しくなることがあります。
なぜなら、できることと、そのご家族にとって快適に暮らせることは、
まったく別の話だからです。
今日は、大阪で狭小住宅の間取りを考えるとき、
数字に振り回されないための設計の整理をしていきます。
なぜ25坪5LDKという発想が生まれるのか
大阪市内や八尾市内では、延床25坪前後の狭小住宅は珍しくありません。
土地価格が高く、敷地はコンパクト。
その中で、できるだけ希望を詰め込みたいというお気持ちは自然です。
多くの方がこのようなお言葉いって、私は考えます。
子どもは2人欲しい
夫婦それぞれの個室が欲しい
在宅ワークスペースが欲しい
将来は親との同居も視野に入れたい
すると自然に「5LDKは必要ですよね」という結論に向かうものなるほどではあります。
ここで大切なのは、その発想が間違っているのではなく、
前提が整理されていないことが問題になりやすい、という点です。
25坪とはどれくらいの広さか
25坪は約82平方メートルです。
マンションで言えば、ややゆったりした3LDKに近いサイズです。
この82平方メートルの中に、5LDKを計画するとどうなるか。
単純に部屋数で割ると約16平方メートルですが、
ここには廊下、階段、水回り、収納も含まれます。
現実的には次のような構成になりやすいです。
LDKはコンパクト
個室は4帖から4.5帖程度
廊下や収納は最小限
可能かどうかで言えば、可能です。
しかし、5LDKの家として活躍できる家となるのか、5つの小さな箱が並ぶだけの家になるのかは、
ご家族の暮らし方によって大きく変わります。
この違いが、後悔するかどうかの分かれ目です。
数字が安心を生む理由と、その落とし穴
なぜ人は5LDKという数字に安心を感じるのでしょうか。

理由はとても人間的です。
足りなかったらどうしよう、という不安です。
これは住まいだけの話ではありません。
たとえば冷蔵庫も同じです。
野菜も肉も飲み物も調味料も、
とにかく全部入れようとすると、ぎゅうぎゅうになります。
でも、毎日使うもの、週に一度使うもの。
ほとんど使わないものを整理すると、
実は今の容量で足りることが多い。
間取りも同じです。
部屋数を増やす前に、本当に常時必要な個室は何か。
ここを整理することが、狭小住宅設計の出発点になります。
実例紹介
大阪市内 阿倍野区 延床25坪のケース
大阪市内で敷地22坪、延床25坪の事例です。
ご夫婦とお子様2人。当初のご希望は5LDKでした。
ヒアリングを重ねると、
書斎は週3日のテレワーク
子どもが完全個室を必要とするのは10年後
今は家族で過ごす時間が中心
という現実が見えてきました。

そこで提案したのは、3LDKに将来可変スペースを組み合わせた設計。
LDKを広めに確保し、将来は間仕切りできる構成です。
結果は4LDK仕様になりました。
完成後、奥様がおっしゃった言葉が印象的でした。
「5LDKにこだわらなくて良かった。広さの余裕が、
気持ちの余裕になっています」
ここが設計の本質です。
部屋数より、生活の質です。
国のデータが示す満足度の視点
国土交通省の住生活総合調査では、住まいの満足度に影響する項目として、
収納の使いやすさ、日当たり、間取りの使いやすさなどが挙げられています。
単純な延床面積そのものは、必ずしも上位項目ではありません。
~出典 国土交通省 住生活総合調査~
つまり、広さそのものよりも、使い方や光環境、
動線の設計が満足度に直結していることが示されています。
狭小住宅の設計では、この視点が非常に重要になります。
25坪で5LDKを成立させるための専門的視点
それでも5LDKにしたい場合、設計側で整理すべき条件があります。
➀ 廊下面積を最小化する
リビングイン階段や回遊動線を活用し、無駄な通路を減らす。ただし、通路を減らしすぎると渋滞が起きるため、幅や視線の抜けを確保する。
② 個室を将来可変にする
9帖を将来2部屋に分ける設計や、可動間仕切りの採用。今と将来を分けて考える。
③天井高さで体感を補う
2400ミリ以上の天井高や、部分的な吹き抜けで圧迫感を軽減する。
④ 壁厚収納を活用する
奥行き30センチで足りる収納も多く、居室を削らず収納力を確保できる。

これらを組み合わせれば、数字以上の体感はつくれます。
ただし、これは設計精度が前提になります。
大阪の狭小住宅で見落とされやすい点
ここからが、一般的な説明では触れられにくい部分です。
大阪の都市部では、3階建てになるケースも多く、
縦移動が増えます。
部屋数を増やすと、階段回数も増え、
日常の負担が積み重なります。
さらに、隣家が近い環境では横窓が機能しにくく、個室が暗くなりやすい。
個室数を増やすほど、光の取り方が難しくなるのです。
部屋数を増やすことが、
快適性を下げることもある。
ここが狭小住宅設計の盲点です。
設計とは優先順位を決める作業
25坪で5LDKは可能です。
ただ私は、こうお聞きすることがあります。
その代わり、何を削りましょうか。
LDKの広さでしょうか。
収納でしょうか。
廊下のゆとりでしょうか。
光の抜けでしょうか。
この問いにご家族様と設計士が一緒に向き合うことが、
狭小住宅の設計では何より重要です。
数字に安心するのではなく、暮らしの優先順位に安心する。
それが、大阪の狭小住宅で後悔を減らす設計の考え方です。
最後に
何坪で住みにくいとか
〇坪ないといけないというような
明確な数字、制限ではありません。
設計の工夫を引き出す、いろいろ検討していく条件でしかありません。
部屋数も手段であり、目的ではありません。
家族の時間、動線の負担、光の質、将来の変化への対応。
これらを一緒に整理すると、間取りは自然と整っていきます。
もし今、狭小住宅の間取りで迷っているなら、
まずは5LDKにするかどうかではなく、
何を一番大切にしたいのかを言葉にしてみてください。

設計とは、答えを押し付けることではなく、
判断材料を整えることだと私は考えています。
その整理から、一緒に始めてみませんか。
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安本昌巨 ブログ用プロフィール
株式会社シーキューブ代表取締役。二級建築士。
住宅業界歴28年以上。
大手ハウスメーカーの下請け工事店として現場経験を積み、新築・リノベーション・不動産まで幅広く携わり、これまで累計700棟以上のご家族様の住まいづくりに関わってきました。
大阪を中心に、狭小地や都市部住宅など条件の難しい住まいにも数多く向き合う中、
「どんな家を建てるか以上に、誰に相談するかが、暮らしの満足度を左右する」
ということを実感しています。
著書『家づくり 絆づくり 幸せづくり』(刊・エルハウス)では、住まいを通じた家族の関係性について発信。
また、79.2MHz FMやお『OH家エーあなたのおうちの相談室』では、メインコメンテーターとして、専門的な住宅の話をできるだけ分かりやすく伝えることを大切にしています。
小学生のころまで、冬になると一度外へ出なければ入れなかった祖父の家の寒いお風呂。
そして大学生のとき、神戸で阪神・淡路大震災を経験し、被災した友人たちの家を何軒も見て回ったこと。
これらの体験から、
「家は性能以上に、日常と命を守る場所だ」
と確信するようになりました。
家を単なる「性能商品」としてではなく、
「住み心地そのものを性能として考える」
そんな住まいの相談相手として、気軽に声をかけていただけたら嬉しいです
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