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狭小住宅の間取り設計 大阪で吹き抜けと中庭をどう考えるか

狭小住宅の間取り設計

大阪で吹き抜けと中庭をどう考えるか

シーキューブ建築設計の安本です。

「すいません…狭小住宅で吹き抜けってアリなんですか?
憧れるけれど、狭いのに、わざわざ床を減らすなんてやっぱりもったいですか?」

この質問、本当によくいただきます。
正直なお気持ちだと思います。お金をかけて“床を削る”わけですから、

このご相談自体が勇気がいるのは当然です。

 

でも同時に、こうも言われます。

明るい家にしたい
広く感じさせたい
圧迫感のある暮らしは避けたい

今日はこの矛盾を、大阪の狭小住宅という前提で、冷静に整理していきますね。

 

結論 狭小住宅に吹き抜けや中庭は向いているのか

結論からお伝えします。

吹き抜けも中庭も、狭小住宅に向いている可能性は高いです。
ただし条件があります。

つくることが目的ではなく、機能させることが前提です。

 

床面積を減らす行為ではなく、光と空気と視線を設計する行為である。
ここを理解していないと、後悔につながります。

なぜ大阪の狭小住宅では縦方向が重要なのか

大阪市内や八尾市内の都市型住宅では、次のような条件が重なります。

隣家が近い
間口が狭い
道路幅が限られている

その結果、横からの採光が取りづらいケースが多い。

 

南向きでも、実際は隣家の壁が迫っている。
窓をつくっても、視線が気になってカーテンを閉めたまま。

この状況で床面積だけを守ろうとすると、

光が不足し、心理的な圧迫感が強まります。

だからこそ、上から光を取る設計が有効になります。

 

吹き抜けはデザインではなく、採光装置であり、通風装置であり、空気循環装置です。

天井の低い美容室

少し想像してみてください。

天井が低く、窓が小さく、空気がこもっているようにも感じてしまう美容室。
広さは同じでも、居心地はこれらの条件で悪く感じます。

一方で、

天井が高い
光が差し込む。

光が落ちてくる。

空気がやわらかく流れている感じがある。

それだけで、同じ面積でも広く感じます。

床面積は変わっていません。
変わっているのは、体感です。

 

狭小住宅の間取り設計では、この体感の設計が重要になります。

 

エビデンスから見る光と満足度

国土交通省の住生活総合調査では、

住まいの満足度を左右する要素として、

日当たりや通風が常に上位に挙げられています。
~出典 国土交通省 住生活総合調査~

単純な延床面積よりも、光や空気環境の評価が高いという結果です。

つまり、狭小住宅で後悔を減らすには、床面積の確保以上に光の設計が重要になります。

 

中庭は贅沢か それとも合理的か

中庭というと、「お金持ちの家」というイメージを持たれることがあります。

しかし都市型住宅では、中庭は光の井戸の役割を果たします。

例えば敷地20坪。
両隣が迫っている。
横窓を開けても壁しか見えない。

この状況で、1坪から2坪の空庭を設けるだけで、LDKの光量は大きく変わります。

この力けっこう絶大です。

視線が空に抜ける。
カーテンを開けられる。
家の中に安心できる外部空間ができる。

広さとは面積だけではなく、視線の抜けでも決まるのです。

カーテンを閉めたままの暮らし

大阪の住宅相談でよくある光景です。

日中でもカーテンが閉まっている。
理由は、視線が気になるから。

道路が近い
隣家が近い

結果、せっかくの窓が機能していない。

中庭や吹き抜けを活用すると、外部からの視線を遮りながら、

上から光を取り込めます。

この違いは、数値では表れにくいですが、暮らしの満足度に直結します。

 

設計士として伝えたい注意点

ここからは、消費者目線では気づきにくいポイントです。

 

断熱性能が前提条件

吹き抜けが寒いのではありません。
断熱と気密が弱い家が寒いのです。

大阪でしたら断熱等級5以上
気密性能の確保1.0以下 できれば0,5以下
換気扇やシーリングファンなどの空気循環設計。

 

これらが整っていないと、単なる空気だまりになります。

 

性能設計を伴わない吹き抜けは、後悔につながりやすい部分です。

 

 

音の伝わり方は価値観で変わる

吹き抜けは音が伝わります。

しかしそれは、家族の気配が分かるという側面もあります。

完全な静寂を求める家か。
つながりを重視する家か。

ここは設計以前に、暮らし方の選択です。

この整理をせずに採用すると、あとから違和感になります。

 

床面積が減るという不安

最も大きな不安はここです。

しかし実務上感じるのは、25坪で無理に5LDKにするより、

4LDKにして一部吹き抜けを設けたほうが体感は広いケースが多いということです。

 

数字と体感は一致しません。

狭小住宅の設計では、このズレを理解することが重要です。

 

実例 大阪市内 敷地20坪 延床25坪

当初は吹き抜けなしの設計でした。

図面上は問題ありません。
しかし模型で確認すると、圧迫感が強い。

そこでリビング上に2帖分の吹き抜けを採用。

結果として、

昼間は照明がほぼ不要
エアコン効率も安定
来客から「思ったより広い」と言われる家に

奥様の言葉が印象的でした。

「数字ではなく、空気が広いんですね」

この言葉が、狭小住宅設計の本質を表しています。

 

大手との違いはどこにあるのか

大手ハウスメーカーは、安定した仕様と分かりやすいパッケージを提示します。
価格訴求型の会社は、面積あたりの単価を前面に出します。

どちらも合理的な選択肢です。

 

ただ、狭小住宅の間取り設計では、同じ面積でも体感が変わるという視点が重要です。

スペック比較ではなく、空間の質をどう設計するか。

ここに差が生まれます。

 

 

判断基準として整理しておきたいこと

吹き抜けや中庭を検討する際は、次の4点を確認してください。

隣家との距離は十分か
横窓は本当に機能するか
日中カーテンを開けられるか
断熱性能は設計レベルで担保されているか

この条件がそろえば、吹き抜けは勇気ではなく戦略になります。

 

まとめ

狭小住宅の設計とは何か

狭小住宅の間取り設計で大切なのは、

床面積を守ることではありません。

 

光をどう落とすか。
空気をどう流すか。
視線をどこに抜くか。
家族の距離感をどう設計するか。

 

大阪の都市型住宅では、横に広げられないからこそ、

縦に抜くという発想が有効になります。

狭いからこそ、設計力が問われます。

 

もし今、吹き抜けや中庭で迷っているなら、
面積を減らすかどうかではなく、

光と視線をどう設計するかという視点で一度整理してみてください。

設計とは、選択肢を増やすことではなく、

条件の中で最適解を見つける作業です。

その整理を、一緒に丁寧に考えていければと思います。

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安本昌巨 ブログ用プロフィール

株式会社シーキューブ代表取締役。二級建築士。
住宅業界歴28年以上。

大手ハウスメーカーの下請け工事店として現場経験を積み、新築・リノベーション・不動産まで幅広く携わり、これまで累計700棟以上のご家族様の住まいづくりに関わってきました。

大阪を中心に、狭小地や都市部住宅など条件の難しい住まいにも数多く向き合う中、
「どんな家を建てるか以上に、誰に相談するかが、暮らしの満足度を左右する」
ということを実感しています。

著書『家づくり 絆づくり 幸せづくり』(刊・エルハウス)では、住まいを通じた家族の関係性について発信。
また、79.2MHz FMやお『OH家エーあなたのおうちの相談室』では、メインコメンテーターとして、専門的な住宅の話をできるだけ分かりやすく伝えることを大切にしています。

小学生のころまで、冬になると一度外へ出なければ入れなかった祖父の家の寒いお風呂。
そして大学生のとき、神戸で阪神・淡路大震災を経験し、被災した友人たちの家を何軒も見て回ったこと。

これらの体験から、
「家は性能以上に、日常と命を守る場所だ」
と確信するようになりました。

家を単なる「性能商品」としてではなく、
「住み心地そのものを性能として考える」
そんな住まいの相談相手として、気軽に声をかけていただけたら嬉しいです

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