住みながらリノベは本当に得か?
住みながらリノベは本当に得か?
大阪で見落とされがちな“工事中の現実”と
建て替え判断の専門視点
リノベーションを検討中の方から、よくこんな言葉をいただきます。
「住みながらできるなら、そのほうが楽ですよね?」
お気持ちはよく分かります。引っ越しは大変ですし、
仮住まい費用も気になります。
ただ、建築士の立場から申し上げると、
“住める”と“安全かつ快適に暮らせる”は別の話です。
ここを整理しないまま判断すると、想定外の負担につながることがあります。
本記事では、大阪でリノベーション・建て替えを多数手がけてきた経験から、
住みながら工事の現実と、建て替えを検討すべきサインを専門家視点で整理します。
まず結論:住みながらの大規模リノベは、
工期と総額が増える可能性がある
・水まわりを含む全面リノベは、住みながらだと工程分割が必要
・工程分割は工期延長につながり、仮設費や管理費が増える
・小さな子どもや高齢者がいる家庭は、安全面の再検討が必要
「引っ越さないから安い」とは限らない、というのが実務上の現実です。
なぜ住みながらだと工期が延びるのか
たとえば、キッチンを全面改装しながら
毎日料理を続ける状況を想像してみてください。
最初は「少し不便なだけ」と思います。
費用も抑えられそうですし、生活拠点も変わりません。
ところが実際に始まると、水が止まる日がある、
粉塵が舞う、職人さんが出入りする。
小さな我慢が毎日積み重なります。
工事側も同じです。
住みながらの場合、一度に全体を解体できません。
安全確保のため工程を分割する必要があります。
工程分割は作業効率を下げ、結果として工期延長につながります。
工期が延びれば、仮設トイレ費、養生費、現場管理費が増えます。
この構造は、一般的なリフォーム説明ではあまり語られませんが、
現場では頻繁に起きてる現実です。
大阪でリノベーションでの実際にあったケース
築40年の木造住宅。二世帯同居、小さなお子さんがいるご家庭。
当初は住みながらのフルリノベのご計画。
しかし現地調査で判明したのは、床下配管の劣化と基礎の一部クラック。
配管更新には床の全面解体が必要でした。
住みながらでは安全確保が難しいと判断し、短期仮住まいへ変更。
結果として工期短縮、総費用も想定内に収まりました。
図面だけでは分からない現場判断が重要になる場面です。
住みながら可能かの専門チェックリスト
次のうち2つ以上該当する場合、仮住まいを含めた計画が現実的だと思います。
1 水まわりを全面改修する
2 構造補強が必要
3 小さな子ども・高齢者がいる
4 工期が3か月を超える
この視点は、消費者目線だけでは気づきにくいポイントです。
建て替えを検討すべき
3つのサイン 大阪での実務判断基準
リノベか建て替えかで迷うとき、感覚で決めるのは危険です。
判断基準を明文化します。
建て替え検討サイン
1 基礎や構造に重大な劣化がある
2 大規模な間取り変更が必要
3 今後20年以上住み続ける予定
2つ以上該当すれば、建て替え優位の可能性が高まります。
なぜ構造状態が最優先なのか
健康診断を思い浮かべてください。
「まだ歩けるから大丈夫」と放置していたら、
検査で異常値が見つかる。
住宅も同じです。
専門家が見るのは、
・基礎の不同沈下
・耐震壁量不足
・白蟻による土台劣化
・断熱欠損による結露リスク
これらは見た目では判断できません。
しかし長期的には修繕費や健康被害につながります。
国土交通省の耐震診断基準では、
評点1.0未満は倒壊リスクがあるとされています。
実際に、評点0.4程度の住宅では補強コストが大きくなる傾向があります。
実例:築50年住宅の判断
基礎ひび割れ幅0.5mm超、不同沈下傾向。
耐震診断評点0.4。
リノベで補強も可能でしたが、
間取り全面変更、今後30年居住予定
構造から再設計できる建て替えを選択。
結果として、長期コストと安心性を優先しました。
大阪特有の見落としポイント
大阪市内や八尾市、東大阪市周辺では、
・前面道路幅員
・準防火地域
・斜線制限
・再建築不可
といった法規制が判断に影響します。
建て替えで同規模再建築できないケースもあります。
この点は、全国共通の説明では触れられにくい重要事項です。
要約~まとめ~
・住みながらの大規模リノベは工程分割で工期延長リスク
・工期延長は総額増加につながる可能性
・建て替え判断は構造劣化と居住年数で整理
・大阪では法規制確認が必須
最後に
建て替えかリノベーションか。
これは価格の問題ではなく、将来の安心の設計です。
まずは現状調査。
そこから判断材料を整理することが、後悔を減らす第一歩です。
毎週火曜日11時20分から、FMやお79.2MHz「OH家エーあなたのお家の相談室」
でも、このテーマを丁寧にお話しています。
焦らず、ご一緒に整理していきましょう。
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安本昌巨 ブログ用プロフィール
株式会社シーキューブ代表取締役。二級建築士。
住宅業界歴28年以上。
大手ハウスメーカーの下請け工事店として現場経験を積み、新築・リノベーション・不動産まで
幅広く携わり、これまで累計700棟以上のご家族様の住まいづくりに関わってきました。
大阪を中心に、狭小地や都市部住宅など条件の難しい住まいにも数多く向き合う中、
「どんな家を建てるか以上に、誰に相談するかが、暮らしの満足度を左右する」
ということを実感しています。
著書『家づくり 絆づくり 幸せづくり』(刊・エルハウス)では、住まいを通じた家族の関係性について発信。
また、79.2MHz FMやお『OH家エーあなたのおうちの相談室』では、メインコメンテーターとして、
専門的な住宅の話をできるだけ分かりやすく伝えることを大切にしています。
小学生のころまで、冬になると一度外へ出なければ入れなかった祖父の家の寒いお風呂。
そして大学生のとき、神戸で阪神・淡路大震災を経験し、
被災した友人たちの家を何軒も見て回ったこと。
これらの体験から、
「家は性能以上に、日常と命を守る場所だ」
と確信するようになりました。
家を単なる「性能商品」としてではなく、
「住み心地そのものを性能として考える」
そんな住まいの相談相手として、気軽に声をかけていただけたら嬉しいです
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