狭小住宅の7階層 第一階層 大阪の狭小住宅は「面積」より「体積」で考える。
狭小住宅の7階層 第1層
土地理解での、面積でなく、体積で家を考える
3階建ての生活を楽しむときの設計のコツ
都市部、大阪などの狭小地で3階建てを考えるなら、
床面積だけでなく高さと体積の使い方が重要です。
家事動線、老後対応、屋上メンテナンスまで、
後悔を減らす考え方を整理します。
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都市部での設計
大阪の狭小住宅の専門家建築士にの考察
「面積」より「体積」で考える
3階建てを前向きに楽しむための設計のコツ
「3階建てって、なんだか大変そうですよね」
この言葉、家づくりの相談で本当によく耳にします。
でも、そのあとに続く本音は、たいてい少し違います。

階段がしんどそう。
年をとったら困りそう。
屋上ってメンテナンスが大変そう。
何となく、住みこなせる自信がない。
つまり、3階建てそのものが嫌というより、「うまく暮らせるイメージが持てない」ことが、不安の正体なんですね。
ここで最初にお伝えしたいのは、3階建ては“我慢の家”ではないということです。
むしろ大阪のように土地条件が限られる街では、3階建ては「狭い土地でも、暮らしをあきらめないための知恵」になりやすいです。
横に広げられないなら、上手に重ねる。
そのときに大切なのが、「面積」ではなく「体積」で考えることです。
この話、少し難しく聞こえるかもしれません。
でも、実はすごくシンプルです。
家を“平面の箱”として見るのではなく、“空気の入れ物”として見る。
すると、同じ床面積でも、暮らしやすさの作り方が変わってきます。
今日は、大阪の狭小地で3階建てを考える方に向けて、
3階建ては本当に不便なのか
高さをどう使うと家事が楽になるのか
将来への不安をどうやって設計で減らすのか
屋上は本当に大変なのか
このあたりを、現実的に整理していきます。
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まず結論
3階建ての満足度は「階段の数」ではなく「役割の並べ方」で決まる
3階建ての家で暮らしやすい人と、疲れやすい人の違いはどこにあるのか。
ここを一言で言うと、「階をどう使い分けたか」です。
同じ3階建てでも、
洗濯する場所と干す場所が遠い
しまう場所が別の階にある
寝る前のトイレで毎回階段を使う
よく使う物が毎回別の階にある
こういう家は、じわじわ疲れます。

逆に、
1回の動きで家事が終わる
階段を使う回数はあっても“無駄な往復”が少ない
将来の暮らし方も少しだけ先回りしてある
こういう家は、3階建てでも不思議としんどくありません。
つまり、問題は高さそのものではなく、役割の置き方です。
これは、重箱におかずを詰めるのに少し似ています。
一段目にご飯、二段目におかず、三段目に果物を入れる。
ただ詰め込むだけだと食べにくいですが、順番を考えて重ねると使いやすくなる。
3階建ても同じです。
ただ上に積むのではなく、暮らしの順番に合わせて重ねる。
ここが設計の腕の見せどころです。
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「あと1坪ほしい」「あと2坪ほしい」より、
「今ある高さをどう使うか」の方が効くことがある
家づくりでは、どうしても「もう少し広ければ」と考えがちです。
あと2坪。あと1部屋。あと半間(91㎝)。
もちろん、その気持ちはよく分かります。
でも都市部では、その“あと少し”を土地で買い足すのは簡単ではありません。
そこで発想を変えます。
広さを、床の広さだけで見ない。
上の空間も含めて考える。
たとえば、同じ6帖でも、
天井が低くて、収納家具がたくさん置かれている部屋
天井が少し高く、視線が奥へ抜け、物の置き場が決まっている部屋
この2つでは、感じる広さが違いますよね。
家は「何帖あるか」だけでなく、
「どこまで視線が抜けるか」
「どこに空気がたまるか」
「どこで立ち止まらずに動けるか」
で、かなり印象が変わります。
ここでいう“体積”とは、難しい計算の話ではありません。
空気のゆとりをどう使うか、という話です。
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3階建ての家事がしんどくなる本当の原因
それは階段ではなく、“ついでにできない”こと
ここでひとつ、生活の場面を想像してみてください。
朝、洗濯機を回す。
終わったら2階へ干しに行く。
ハンガーを忘れて1階へ戻る。
夕方、乾いたものを取り込む。
子どもの服は3階、大人の服は2階、タオルは1階へ。
1回1回は小さな動きです。
でも、これが毎日続くと、家事は“階段の数”ではなく“中断の回数”で疲れます。
だから、3階建ての設計では「階段があるか」よりも、「ひと続きで終わるか」を見る方が大切です。
洗う
干す
たたむ
しまう
この流れが途中、どこで途切れるのか途切れないのか。
ここを気にかけて整えるだけで、
3階建ての印象はずいぶん変わります。
大阪の狭小地では、
ランドリールームを大きく確保するのが難しいこともよくあります。
でも、だからこそ“専用の部屋を増やす”のではなく、“今ある場所に役目を重ねる”発想が生きます。

例えば、廊下。
ただ通るだけの場所になっていないでしょうか。
風が抜ける場所なら、物干しの補助スペースにもなります。
階段ホールに少し余白があるなら、室内干しの場所にもなります。
つまり、面積を増やさなくても、役目は増やせるということです。
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3階建てをラクにするコツは、
「縦に分ける」ではなく「縦につなぐ」
3階建てというと、1階・2階・3階が別々の世界のように考えられがちです。
でも、うまくいく家は“分ける”だけでなく“つないで”います。
たとえば、
1階は外から帰ってきた流れを受け止める階
2階は家族が長くいる階
3階は静かに過ごす階
こんなふうに、役割をざっくり分けながらも、空気や光や家事の流れはつながっている。
この状態が理想です。
逆に、階ごとに役割がバラバラだと、
毎日の行動がいちいち途切れてしまいます。
「何階に何を置くか」は、収納の話に見えて、
実は暮らしの疲れ方そのものに直結しています。
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将来の安心は「広い老後部屋」ではなく「逃げ道のある1階」でつくる
3階建ての話になると、かなり高い確率で聞かれることの1つが、
「年をとったらどうするんですか?」
という質問です。
この問いに対して、最初から“老後専用の大きな部屋”を用意するのは、
あまり現実的でないことも多いです。
今の暮らしを圧迫してしまうことにもなるからです。
そこで大切なのは、「今も使えて、将来も助かる場所」を
1階に仕込んでおくことです。
目安としては、4.5帖前後のスペースが
あとから壁を破ってでも確保できる。
大きすぎなくていいのです。
でも、将来「ここで眠れる場所がある」と思える確保ができるかどうかは大きいです。
今は収納でもいい。
趣味室でも、土間スペースや、在宅ワークでもいい。
でも、将来必要になったらつなげて寝室にとることができる。
この「役割を変えられる空間」があると、
3階建てへの不安はかなり和らぎます。
ここでも大切なのは、
部屋数を増やすことではなく、
役割を重ねることです。
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水まわりは「今の便利さ」だけでなく
「あとで広げられるか」を見ておく
老後の安心というと、つい段差や手すりに目が行きます。
もちろんそれも大切です。
ただ、設計の初期段階でより効きやすいのは、水まわりの位置関係です。
トイレと洗面が近いか。
将来、少し広げられるか。
1階だけで生活が完結する形に持っていけるか。
このあたりは、住み始めてからでは変えにくいところです。
今すぐ介護の話をする必要はありません。
でも、「もしそうなったら、この家は助けてくれるか」という視点を
少し持っておくと、狭小住宅の設計の質は上がります。
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屋上は「贅沢品」ではなく、都市部で外部を取り戻す工夫にもなる
屋上というと、どこか特別なものに感じる方もいます。
でも大阪の都市部では、
庭を取りにくい分、屋上が「外の居場所」になることがあります。
洗濯を干す。
少し風に当たる。
子どもと空を見る。
ビニールプールで子供が水遊び。
夕方にイスを出して一息つく。
こういう時間は、意外と、いえけっこう
暮らしの満足度を上げます。
一方で、不安もありますよね。
メンテナンスが大変そう。
防水が心配。
あとでお金がかかりそう。
ここは、感覚ではなくではいくら費用がかかるのか。
整理して考える方ことが安心です。
防水には種類があり、考え方も違います。
一般的に、塗り替えを前提に考えるタイプもあれば
(メンテナンス費用がかかるタイプ)
金属+被膜で守るタイプ
(メンテナンス費用が少なく済むタイプ)
とあります。
金属屋根に、塗膜で覆うと考えると、
最近多用されるガルバリウム鋼板屋根に、
TOPに塗装があると考えていただくと、
同じような費用感と理解していただきやすいでしょう。

ただし、ここで知っておいていただきたいのは、
屋上のトラブルは「防水材そのもの」だけで起こるわけではない、ということです。
実際には、排水口の詰まりがきっかけになることも少なくありません。
つまり、長持ちする屋上に必要なのは、材料の種類だけでなく、
「掃除しやすいか」「点検しやすいか」です。
これは大きなポイントです。
どんなに良い材料でも、見に行きにくくて、手入れしにくければ、不安は残ります。
逆に、年に一度でも気軽に見に行けて、排水のチェックがしやすいなら、安心感はかなり違います。
そう考えると、屋上は、屋根の勾配があって、屋根足場があることにはならないので、
屋根材の材料で屋上をつくって、その上にさらに塗膜でのコーテイング。
屋根以上の装備でいながら、勾配はきつくない。
費用感の心配はぐっと減ることになります。
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家を住まい費として35や40年、50年の単位での住まい費を考えると、「最初の値段」より
「あとで何回手がかかるか」が効いてくる
家の話でつい見落としがちなのが、“工事の回数”です。
メンテナンス費用はもちろん大事ですが、
実際には「また工事か」「また足場か」「また日程調整か」という心の負担もあります。
だから、屋上を考えるときは、
何年ごとに何をするのか
それは自分でできることか
業者さんに頼む規模か
ここまで見える化しておくと安心です。
30年、40年、50年と住む家なら、
「いくらかかるか」だけでなく
「何回気にしないといけないか」まで考えた方が現実的です。
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3階建ての魅力を下げないために
最初から「不便そう」という前提で見すぎないこと
ここで、どうしてもお伝えしたいことがあります。
3階建ては、ネガティブな家ではありません。
むしろ、
狭い土地でも、
光を取りやすい
上下で役割を分けやすい
屋上や高窓など、都市部ならではの可能性が広がる
眺めや抜け感をつくりやすい
という、前向きな側面もあります。
ただ、その強みは、雑に積むことでは出来ません。
順番よくつみ重ねたときに初めて出来上がってます。
そうです。
3階建てを考えている方に必要なのは、
「やめた方がいい理由」を集めることではなく、
「どうすれば気持ちよく住めるか」の設計条件を知ることです。
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以下、本日のまとめ
狭小住宅は“広いかどうか”より、
「上手に重ねているか」で決まる
狭小地の家づくりでは、床面積だけを見ていると、
どうしても足りないものばかり気になります。
でも実際には、
高さをどう使うか
役目をどう重ねるか
将来の逃げ道をどう仕込むか
メンテナンスをどう見える化するか
このあたりで、暮らしやすさは大きく変わります。
3階建てだから大変、ではありません。
整理されていない3階建てが大変なのです。
だからこそ、これから家づくりを進めるなら、
「何帖あるか」だけでなく、
この家は行ったり来たりが減るか
1階に将来の選択肢があるか
屋上は安心して付き合えるか
こういう視点でも見てみてください。
狭小住宅は、あきらめの家ではありません。
知恵がそのまま成果になりやすい家です。
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FAQ よくある質問
Q1. 3階建てはやっぱり毎日しんどいのですか?
階段があること自体よりも、
洗濯や収納で何度も往復する動線が負担になりやすいということです。
役割の並べ方を整理すると、印象はかなり変わります。
Q2. 狭小住宅では専用のランドリールームは必要ですか?
あれば便利ですが、必須とは限りません。
廊下や階段ホールなど、
空気が動く場所に役目を重ねることで、
面積を増やさずに対応できることがあります。
Q3. 老後を考えるなら最初から平屋的な使い方にした方がいいですか?
今の暮らしまで不便にする必要はありません。
1階に4.5帖前後の可変空間を仕込んでおくと、
今も使えて将来も助かる設計になりやすいです。
Q4. 屋上はメンテナンスが大変ですか?
材料の種類によって考え方は変わりますが、
防水材そのものより、排水口の掃除や点検のしやすさが
長持ちに大きく影響します。
Q5. 狭小住宅でいちばん大切な考え方は何ですか?
面積だけでなく、体積と役割の重ね方で考えることです。
横に広げられない土地ほど、この視点が暮らしやすさに直結します。
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このコラムの要約
・狭小3階建ての暮らしやすさは、床面積よりも「高さの使い方」と「役割の重ね方」で大きく変わる
・3階建てのストレスは階段の数ではなく、洗濯や収納などの無駄な往復動線で生まれやすい
・専用室を増やすより、廊下や階段ホールなどに役目を重ねる方が狭小住宅では合理的
・将来の安心には、1階の4.5帖前後の可変空間と、水まわりの近さが有効
・屋上の安心感は、防水材の種類だけでなく、排水口の掃除や点検のしやすさで差が出る
・狭小住宅は「広いかどうか」より、「上手に整理されているか」が満足度を左右する
著者プロフイール
安本 昌巨(やすもと よしきよ)
株式会社シーキューブ 代表取締役 / 二級建築士
「広さを設計する。ゆとりを設計する。狭小地に無限の広がりを。」
住宅業界に身を置いて28年以上。
大手ハウスメーカーの下請け工務店の現場監督からキャリアをスタートし、
大阪で、新築・リノベーション・不動産まで幅広い領域で
700棟以上の住まいづくりに携わる。
都市部の狭小地や密集地と向き合い続ける中、ひとつの確信に辿り着く。
それは、住まいの豊かさ、広さは「面積」ではなく、人が空間をどう認識するかで決まるということ。
この考えから提唱しているのが、独自の設計理論 「認知設計」
認知設計とは、人が空間をどう認識するかを設計する住宅デザイン。
土地の容積デザイン、光と風の取り込み、視線の抜け、素材や照明による錯覚効果など、
人間の知覚と空間構成を統合することで、
数字上の面積を超えた開放感と快適性を生み出す
住まいづくりを実践している。
この思想は 「狭小住宅:7つの階層」 「認知設計:7つの空間デザイン」として体系化され、
都市の限られた敷地でも開放感・機能性・資産価値を両立する住宅設計として注目されている。
設計の原点は、幼少期に感じた住まいの不便さ
学生時代に神戸で経験した阪神・淡路大震災の記憶。
家は単なる建物ではなく、
日常の快適さと家族の命を守る場所であるという信念のもと
設計に向き合っている。
著書
『家づくり 絆づくり 幸せづくり』(エルハウス刊)
FM79.2MHz
「OH家エー あなたのお家の相談室」メインコメンテーター。
「狭いから仕方ない」を、
「狭いからこそシンプルな設計で豊かにできる」へ。
都市住宅における新しい住まいの価値を提案し続けている。




